1. |
畦道に宇宙
02:44
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夜 田んぼと田んぼに挟まれた道の途中 風は静か
ひとりぽっち 僕は立っている 真っ暗闇の中で
これは瞼の裏なのか 目の前の風景か
まばたきしても なにも変わらない 真っ暗闇の中で
そこにあるはずの身体も 足の下の地面も
曖昧に不確かに溶けて 僕はひとときの宇宙飛行士
やがて瞳は 月の届ける青い僅かな光を
なんとか捉まえて ゆっくりと進んだ
夜 田んぼと田んぼに挟まれた道の途中 僕はわざと
持っていた懐中電灯 消してみたくなったのさ
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2. |
ストレンジ通りからの帰還
04:40
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いつもと違う帰り道 不意に見付けた曲がり角の先
小さな変化と近道を 期待して踏み込んだはずだった
幅の狭い路地の両脇には 古い平屋が並び
家それぞれの頼りない 玄関灯りを辿り歩く
咳払い ナイター中継 会話は聞こえない
人らしき気配だけが 無愛想に漂っている
言葉に出来ない 仄かな心地悪さ
此処に長くは 留まれない
闇に囲まれた 臆病なよそ者
微かな煙草の煙の匂いで 家先に立つ人物に気が付く
ランニングシャツにサンダルとトランクス 表情は黒く塗り潰されて
だけどオレンジ色の小さな火が 監視カメラの様に こちらを向いた
通り過ぎたあと 静かに早歩き 背骨の辺りが落ち着かない
言葉に出来ない 仄かな心地悪さ
此処に長くは 留まれない
闇に囲まれた 臆病なよそ者
愚かなるよそ者
手足は脳味噌を裏切って 喉はカラカラ
ミステリーとホラーの斑模様を彷徨って
いつもと違う角度から 不意に飛び出た馴染みのある道
息子が何か駄々を捏ねる声が 家の外まで聞こえてくる
いつもと違う帰り道 想像力に殺されかけた夜道
月は砂漠の国の剣のように ほっそり欠けて尖っていた
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3. |
旅のもの
05:28
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旅人になりたくて 部屋を出た
お腹が空いて 夕方帰ってきた
ひとりぼっちに憧れて 町を出た
君の家のそばを通りかかり 電話をかけた
時を忘れて 身体を忘れて
気まぐれな風についてゆきたい
忙しく消えてしまった流れ星
言葉と音はチグハグにこぼれだした
羽もなく尻尾もない つまらない
つるんとした生き物が ほらここに
なにものにもなれなくて 舟に乗った
考え事をしていたら いつの間にか向こう岸に着いた
友を忘れて 荷物を忘れて
見知らぬ町の匂いを知りたい
旅人になりたくて 部屋を出た
お腹が空いて 夕方帰ってきた
本当の「ほんとう」は胸の中で
太陽のように鋭く燃えている
なんにもなくても歩いてゆけることを
ずうっとずうっと覚えていよう
覚えていよう
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4. |
僕はこわくなった
05:09
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君を眺めてると 君を眺めてると
時間が過ぎてしまうこと なんだかこわくなった
君と話してると 君と話してると
歳をとってしまうことが 初めてこわくなった
狭い狭い部屋に大事なものが増えてく
足の踏み場も無くなった頃 いくつかは旅立ってしまうのだろう
君と暮らしてると 君と暮らしてると
煤まみれの僕の窓 こじ開けられた気分だ
僕がおそれること 僕がおびえてること
聞こえなかったふりして 丸めて食べてしまった
それでも僕の工場は 次から次へと煙を吐き
誰ひとり欲しがらない 不器用な玩具を作り続けてる
このまんまで良いのかなと 考えている暇は見付けられない
やっとこさ考え始めた頃 もう眠たくなってしまうのだろう
世界中の辞書にも おとぎ話のなかにも
この想いへの手がかりは 載せられてなさそうだな
君を眺めてると 君を眺めてると
時間が過ぎてしまうこと なんだかこわくなった
いつか消え去ってしまうことが 僕はこわくなった
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5. |
解けない魔法
04:09
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君に解けない魔法かけて 僕のものにしてしまいたくて
後ろからそっとステッキを振ってみるけれど
先に魔法にかかったのはきっと僕のほうだったのさ
ほら また今日も眺めてる窓の外
ホントは話が出来るようになりたいだけだよ
君の瞳の中に映していてほしい
まるで見えない糸に絡まって引っ張られているみたいに
君のいる場所に引き寄せられてゆくよ
ほうきにでも乗って君が暗くよどんだ僕の街に
今すぐ飛んで来てくれたらいいのに
意味も無くひとりうろうろして君を探すけど
後ろ姿見付けるたび逃げ出してしまう
いつか解けない魔法解けて 君を忘れてしまえたら
僕には一体何が残るのだろう?
気まぐれな君のゲームに負けてしまったような気分
ほら また今日も眺めてる窓の外
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6. |
夜道
06:44
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時々感じる孤独 疲れて飲み干す猛毒
心の底から愛を君に捧げるよ アイウォンチュー
言葉はいつでも素敵 若い頃はみんな無敵
骨抜きになるよ細胞 傷だらけなのさアイウォンチュー
さあ行こう 明日へと向おう カラリと笑って
されども感じる孤独 本物ではない孤独
お腹の底から歌おう デュビラパラリララパラブーイエー
さあ行こう 明日へと向おう カラリと笑って
君はいつだって素敵 髪の匂いさえ素敵
すれ違うヘッドライト 照らしだしてくれアイウォンチュー
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7. |
となり町の映画館
03:30
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とんがり山を車で越えて となり町にひとつきりの映画館へ
チケットもぎのおじさん こんにちわ となり町にひとつきりの映画館へ
ひとつきりの映画館はとても古いから上映中の映画もひとつきり
「これがなくっちゃ」と父さんはポップコーンとパンフレット買ってくれる
跳び上がるほど大きな音で僕の心臓はドキドキする
見逃すまいとトイレに急ぐ僕はささくれたドアでひざっこぞうにケガをした
忘れてしまうこと なくなってしまうもの ちっぽけなうたにしてつぶやくよ
傷も目立たなくなった頃 僕はなんだか大人になっていた
父さんも母さんも歳をとった 僕はなんだか大人になっていた
そしてひざっこぞうの傷あと見るたび思い出話がしたくなる
僕の町は土の匂い となり町は海風と潮の匂い
休みの日でも空いててさ シートもそんなに柔らかくはないんだな
ちゃんとまだ残ってたらいいなぁ となり町にひとつきりの映画館さ
今度は僕が自分で買うよ チケットとポップコーンとパンフレット
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8. |
ほうれんそう
05:59
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いい曲だねって言われたくて たくさんのもしもを 知らんぷりしてきた
いい曲だねって言われたくて か細い夜道を ひたすら歩いた
僕の歌はいつも ほうこく れんらく そうだん
ノイズ混じりでも 君に届いているかなあ
トトト ツーツーツー トトト トトト ツーツーツー トトト
夢と現を抱えて ひげもじゃになって
BGM止まりか 悔しいな 悔しいな
ほっこりだけか 悔しいな 悔しいな
音楽にいつも 助けられてきた
今やもうこれがなけりゃ僕は 鎧剥がされた素っ裸のアーサー
だから いい曲だねって言われたくて たくさんのもしもを 見て見ぬ振りしてきた
いい曲だねって言われたくて それだけが外へと 連れ出してくれた
僕の歌はいつも ほうこく れんらく そうだん
弱々しいけど 君に届いているかなあ
トトト ツーツーツー トトト トトト ツーツーツー トトト
あの山の向こうへ アンテナを広げて
BGM止まりか 悔しいな 悔しいな
またほっこりだけか 悔しいな
返せるものは たったこれっぽっちか
これからも他愛なくてちっぽけな自分と 生きていくしかないのだろうか
イヤダ イヤダ イヤダ イヤダ イヤダ
まだまだ磨けば光るはずなんだ
イヤダ イヤダ イヤダ イヤダ イヤダ
身の程に合わないことがもっとしたい
もっと自分が選んだ服が着たい もっと自分が選んだ未来が見たい 知りたい
あの日サヨナラしたたくさんのもしも達に 笑顔で手を振りたい 胸を張りたいんだ
いい曲だねって誰かが 言ってくれたときから こんな面白いことは他に無い と思った
どんな手を使ってもしがみついていたい その願いは跡切れ跡切れながらも 今ここに続いてる
僕の歌はいつも ほうこく れんらく そうだん
だからもっと君の声も 届けておくれよ
いい曲ってなんだ? って 突っ込んでおくれよ
全然好きじゃないよ って ケンカしにおいでよ
僕の歌はいつも トトト ツーツーツー トトト
僕の歌はいつも トトト ツーツーツー トトト
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小田晃生 / Kohsey Oda Yamanashi Prefecture, Japan
小田晃生
おだこうせいKohsey Oda
1983年生まれ - 岩手県住田町出身
音楽家・シンガーソングライター
Born in 1983 - Japan
Musician, singer-songwriter
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